いよいよ明日から東京公演スタートという6月6日。「ユーミンスペクタクル シャングリラII」の公開ゲネプロが、国立代々木競技場第一体育館で開催されました。ゲネプロとは、ドイツ語のゲネラルプローベ(Generalprobe)の略で、本番とまったく同じ手順で行う通し稽古。この日は、ユーミンファンクラブの方々とマスコミ関係者はじめ、さまざまな業界からの招待客が会場を埋め尽くしました。
開演40分前。スタンド側のプレス招待席に着いた途端目に入ったのは、ステージの巨大なアイスリンク(なんと、23×17メートルもあるそうです)。そして、その氷を溶かしてしまいそうなアリーナ席前方の熱気が伝わってきました。会場にはスモークが立ち込め、単調な信号音が鳴り続け、期待に鼓動も早まります。前作「シャングリラ」から4年の歳月をかけて準備されたショーとは、一体どんなものなのでしょう?
冷たいブルーのライトに照らされ、吹き荒れるブリザード。イヌイット風の4人組が、不時着した難破船らしきものを見つける。懐かしい未来というたたずまいのシップ。
緋色のライトをきっかけに、オープニング曲「LOVE WARS」が鳴り響き、難破船には飛行船乗り姿のユーミン(松任谷由実さん)が。歌い終わると、「4年ぶりに帰って来たシャングリラは、コンサートのような、サーカスのような、アイスショーのような、世にも珍しいスペクタクルです。それは、空想することでしか創れない世界。消息を断ったシャングリラ号、タイムトラベル、氷の惑星、すべてが絡み合ってショーは進んでいきます。ストーリーを組み立てるのは、みなさん自身です」と、ユーミン自らが紹介してくれました。
波の音をバックにアイスリンク上を優雅に踊る氷の妖精たち。白いオーガンジーのような布が、夢へと誘うように揺れる……。楽曲は「Delphine」。ロシアのサーカスアクトによる流麗なダンスと、ユーミンが歌う切ないメロディ、グランブルーの色を放つライト。そんな幻想的なステージは、研ぎ澄まされた美しさの融合の場。そこが舞台であることを忘れさせます。見覚えのある、そんな感覚。いつかどこかで、そう夢の中で出会ったのかもしれません。
「Glory Birdland」では、サーカスアクトの絶技が続々。軽妙で楽しげな演技に、アリーナ席からは手拍子が。「このアイスリンク、本物の氷なので滑りやすくて。安全や動きやすさを考えて、ずいぶん靴には悩んだんですよ」とユーミンの秘話もちょっぴり聞けました。
難破船の幽霊たちが「輪舞曲」で踊り、奇妙な彫刻家と彫像がアリーナへ下り、追いかけっこ。客席で捕まえられた彫像が、布をかぶせられてステージへ運ばれ・・・・・・。
「かんらん車」では、降りしきる粉雪を淡い白のライトが放射状に照らし、オブスキュアな銀世界。
一転して、激しいイントロ。ステージ奥に出現した朽ち果てた船の甲板で、歌う「リフレインが叫んでる」。さく裂するギター、爆発音とともに一瞬炎が燃え上がり、傍若無人に暴れまわる海賊。ドラムの音がとどろき、曲は「WANDERERS」。
そして、「Happy Birthday to You〜ヴィーナスの誕生」では、ついに空中ブランコが。今まで見たどの空中ブランコとも違う、ダイナミックでエレガントな動きに、めまいを覚えずにはいられません。
「航海日誌」を歌いながら、船の舳先から宙にのぼっていくユーミンは、まるで月へと帰るかぐや姫。再びゆっくりと下りて来て大きく両手を広げた姿は、一変、女王そのもの・・・・・・。
ユーミンが右手を高く挙げたとき、すべては消え去りました。胸の中だけに夢幻の軌跡を残して。
もちろん、すてきなアンコール曲を聴かせてくれたことは言うまでもありません。でも、それは秘密。大切にしまっておきたい夢の断片ですから。
外へ出ると、そこはいつもの代々木競技場。どうやら魔法が解けてしまったみたい。さっきまで旅していた世界がこつぜんと消えてしまった切なさと、自分だけの楽園を見つけた喜びとが交錯するようでした。
●コンサート情報
「ユーミンスペクタクル シャングリラII」
・横浜公演 9/10(水)〜9/15(月・祝)
・大阪公演 7月31日(木) 18:30公演
・広島公演 8月21日(木) 18:30公演
入場料金:S席 ¥11,500/A席 ¥9,800(全席指定・税込)
「ユーミンスペクタクル シャングリラII」ホームページ
●〜海外アーティストによるYUMING カヴァー・アルバム〜
「OVER THE SKY:Yuming International Cover Album
TOCT-25065 2,800円(税込)
70年代〜80年代〜90年代〜現代、それぞれの時代を超えて活躍する10組の海外アーティストがYUMINGの名曲をカヴァー。
リタ・クーリッジ「卒業写真 / GRADUATION PHOTOGRAPH」、ピーボ・ブライソン「霧雨で見えない/ HOW CAN I BREATHE」、パティ・オースティン「朝陽の中で微笑んで
/ IN THE MORNING LIGHT」他を収録。
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