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洋服に溢れた世界で ―「ユニバーサル・デザイン」着想の発端
「ユニバーサル・デザイン」という言葉がある。井崎孝映さんは、そんな「ユニバーサル・デザイン」をコンセプトにして洋服を作るファッションデザイナーだ。井崎さんの起業のきっかけともなったユニバーサル・デザインの洋服。いったいどんなものなのだろう。
「ユニバーサル=障害者や高齢者用」みたいに受け取られがちですが、そうではありません。障害者や高齢者に限らず、体型やお肉のつき方ってみんな全然違う。人間の動きに合わせた洋服がもっとあっていい。誰もが動きやすい服、動いている時に美しく見える服というのは、おのずと障害者や高齢者の方にも着やすい服ということです。これまでの障害者や高齢者の服というのは、介護しやすい服、着脱しやすい服でした。
7、8年前ですけど、障害者の方を集めたダンスパーティーを開催しました。その準備段階で、ホテルの宴会場を借りてオシャレなパーティーをやりたいってことになりました。でも当時は、なかなかそういう場所が見つけられない。たとえば車イスで入ると絨毯が汚れてしまうとか、見映えがよくないとか、いろんな理由で拒否されて、何カ所も回ってやっとの思いで場所を見つけることができたんです。
「オシャレして来てね」と参加者に呼びかけたんですが、みんなが着てくるものはトレーナーやジーンズ。「オシャレしたいにも、自分たちが着られる服がない」って。それから、なんでこんなに洋服は溢れているのに、障害をもった人が着られるオシャレな服はないのかなと思って。私にとってはとても不思議だったんです。
この時井崎さんは文化服装学院に通いはじめたばかり。井崎さんと服飾の関わりはさらにさかのぼる。
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