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win-win > 第80回 鷹松 香奈子さん・斉藤 美和さん

テムズ川で、一人、寂しく見つめて
- 鷹松
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でも、辛い思い出も(笑)。
- 斉藤
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いいことばかりじゃなかったですよね。当時ロンドンコレクションにトライしたのは私一人だったんですよ。始めは「何でもできる」って思っていました。自分の体ひとつ行けば、たとえば英語力がなくても、まあ単語並べればなんとかなるし、オーディションに行ってブック(写真や経歴などがわかるもの)を見せて、歩いて、「やることは日本と同じでしょう」と、単純な発想で行ってしまったんです。
若さと勢いで何とかなると思っていたのでしょうね。でも実際は言葉が通じない。オーディションをキャスティングって言うことすら知らなかった。また、オーディションは通ったけど本番でデザイナーやスタッフとのコミュニケーションがうまくいかない。気持ちがへこんでいく自分がいて「あれ、こんなはずじゃなかった。私ってこんなにも無力だったの?」って。周りはもちろん、世界中から集まっているモデルさんばかりで、私は一人ぼっち。どうしよう、誰か助けて、って叫んでいましたね。
- 佐々木
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敗北感っていうか、手が届かない情けなさ、でしょうか。
- 斉藤
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そう、初めての挫折感、今まで何でも一人でできると思い込み、天狗になっていた自分の鼻っ柱をポキンと折られた感じでした。落ち込みましたねえ。オーディションに行く途中の道で、テムズ川の橋を歩いていたんですよ。橋の上から欄干のところに、身を乗り出して川をぼーっと眺めながら、ああ、テムズ川って、このまま流れていくといつか日本に着くかなあ、なんて、ちょっと危ない状態でしたね(笑)本当に。
- 鷹松
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そのときのこと、覚えています。ガリガリに痩せて帰ってきましたね、見る影もないくらい。
- 斉藤
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もう、ご飯も食べられなくなっちゃって。風が吹いたらよろけていましたよ。
- 佐々木
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いくつくらいのときでした?
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