ビジネスウーマンが、組織の中でステータスを上げていくモチベーションや、責任あるポジションについたときに必要なマインドとは何か。『組織の中のキャリアアップ』では、アムジェン株式会社・執行役員の江端貴子さんを講師にお迎えし、自ら体得された具体的なキャリアアップのポイントを学びました。
■Knowledge Workerとして生きる
江端さんは大学卒業後コンピュータ会社に入社し、希望していたシステム開発部に配属されました。しかし実際の仕事のほとんどが雑用だったのです。矛盾を訴える江端さんに対しての、当時の上司からの「今の仕事を君に任せているのは、業務の全体像を理解してもらうため」という一言が、江端さんのキャリアに転機をもたらしました。上司の答えに納得しつつも仕事の取り組み方そのものを変えた江端さんは、現場のシステム業務などを自ら学び、考えやアイデアを積極的に打ち出して実績を上げ、本来の希望であったシステム開発・企画業務に携われるようになったのです。つまり江端さんは、「『仕事の中で情報などを受け取ったとき、自分で処理するだけではなく、何らかの付加価値を付けて顧客や同僚にパスする』という理念のもとに働く人」、いわゆるKnowledge Workerへの転身を遂げたのです。
■「人を動かす」ことに日々奮闘中
江端さんはその次に入社した会社で管理職に。その後、外資系会社の日本法人の立ち上げの話に関心を持ち、現在の会社に入社し。翌年に経営層の一員に就任しました。
管理・経営職は、チームや部下を動かし引っ張っていかなければなりません。ここで江端さんがご自身の経験を交えながら紹介して下さったのが、現在の会社の上司から教わったという「人を動かす心得」。その一つがNobody is perfect.(完璧な人はいない)。企業のトップは自分の力を過信している部下に対し、自分のスキルに気づかせて動かさなければなりません。江端さんも、能力は高いがモチベーションが低い社員の指導に日々苦心されているとか。そのほか、やる気がありスキルも高い社員への権限委譲は大切だが、社員の弱点をカバーして、結果には責任を持つという「権限委譲と管理不行き届きとは紙一重」、部下のやる気を妨げない程度のさりげないフォローを欠かさないという「部下の能力と癖を知り、ボスは常に先回り」などの心構えを分かりやすく解説していただきました。ご自身はこれらに「職場の雰囲気は楽しく」という心得を加えて、社員との和やかな雰囲気作りを心がけていらっしゃるそうです。
■Do the right things(正しいことをする)からGet the right things done(正しいことをさせる)へ
江端さんが、Knowledge Workerのキャリアアップ・ポイントとして最も強調されたのが「自己評価」。それは、自分が今取り組んでいることを、自分や会社の将来を見据えて正しいと判断できるか、その取り組みに満足しているかと、自分の仕事を省みることを指します。人を動かす立場になった場合、会社や自分にとって正しいと思うことを部下にさせるためには、トップは正しいことを示さなくてはいけません。会社のどのようなポジションにいても、自己評価は不可欠なのです。
日本で女性の経営者が少ないのは、日本人女性の潜在意識の中に、他人の仕事を評価することで生じる人間関係の亀裂に対し、恐れがあるのではないかという江端さん。自己評価をしたうえで自分を信じて仕事をすれば、自然と周囲の人も理解しついてきてくれるはずだという、江端さんからの、ビジネスウーマンへの心強いエールは、きっと受講者のみなさんの心に響いたはずです。