「日本を変える〜経済、政治&社会〜」
(川本裕子/高橋伸子/森信茂樹/関口和一※)※ファシリテーター
午前中に全体会場での講演をし、これからの日本が、どのように新しい発想で「Act Outside the Box」をしていかなくてはならないか語って下さった、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授の川本裕子さん、イー・ウーマンの円卓会議の議長としても活躍している生活経済ジャーナリストの高橋伸子さんや中央大学法科大学院教授の森信茂樹さんを講師に、日本経済新聞社産業部編集委員兼論説委員の関口和一さんをファシリテーターとして迎えた「日本を変える〜経済・社会&政治〜」の分科会。一流の講師陣の最新のメッセージを聞きとろうと、会場には多くの人が集い、真剣な雰囲気の中、分科会がスタートしました。
「働く人の円卓会議」でも常に新しく、かつ具体的な議論を進行してくださる森信茂樹さんは、財務省(大蔵省)で33年間勤務。特に、消費税率の引き上げを含め、国の根幹である税制に長く携わり、その後、「タックスロイヤー」を育てたい気持ちで、中央大学法科大学院で学問の道を歩みます。また、ジャパン・タックス・インスティチュートというシンクタンクを立ち上げ、民間から国へ、税制に対する意見を伝えるために活動。大きな政府でも小さな政府でもない、「中福祉」を目指した税制が必要なのでは? という森信さんの問題提起を皮切りに、講師の方々から次々と意見が出され、議論が発展していきます。
「キャリアは、10年ごと」と言う高橋伸子さんは、主婦の友社で、編集の仕事に10年間携わった後、フリーランサーに転身。金融審議会、情報通信審議会などの委員のほか、ベネッセコーポレーションの社外監査役も務めます。「税は、公平で公正で、かつわかりやすくなければならない」というお考えのもと、国の債務を家計レベルに例えたその解説は、明快。ジャーナリストとしての厳しい視点を持ちながらも消費者目線を忘れない、優しいお人柄が表れています。非常にわかりやすく国の税制の現状をとらえることができました。
約20年間のマッキンゼー勤務の後、早稲田大学大学院ファイナンス研究科で教鞭をとる川本裕子さん。ヤマハ発動機ほか、多くの上場企業の社外役員や、金融審議会委員も兼任。「子どもたちが社会で生きていくにあたり、良い社会にしたいから今の仕事をしている」と、母親の顔をのぞかせ、優しく力強く話しました。今後の政府のあり方、政権交代の考え方も明確。また現在、国民の1票に格差があるために、経済対策に歪みが出ている。これを是正するための「一人一票実現国民会議」が展開されていること。もし現在の一票のあり方が不平等だと考えるなら、衆議院選挙と同時におこなわれる「最高裁判所裁判官 国民審査」で、1票の格差を肯定している裁判官に×をつける方法があることなどを紹介。具体的なお話に、参加者の真剣味はますます高まる様子です。
鋭い切り口の進行でディスカッションを盛り上げてくださる関口和一さん。東京だけでなく、ワシントンにも長く赴任、特に情報通信分野に造詣が深い関口さんならではの視点も魅力的です。高福祉の北欧の例や、「賢い政府」というキーワードをあげながら、一流新聞記者としての質問力で、議論を深く導きます。小泉政権の改革について、会場に是非を訪ねる一幕も。話は2009年8月30日の衆議院総選挙にもおよび、会場の約7割が、「今回は民主党支持」に挙手(!)するなど、タイムリーな話題に会場はエキサイト。議論は白熱しました。
参加者からは、「納税者番号制度についてどう思いますか?」「消費税という制度は、日本人にマッチしていると思いますか?」「最近は、強くコンプライアンスが求められており、消費者を保護しすぎだとは思いませんか?」などの鋭い質問が次々とあがりました。「働く人の円卓会議」でも多くがディスカッションされている事例を出しながら、講師陣からこれからの日本の政治と国民のかかわり方について、貴重な意見や情報が与えられ、また発信された、参加者それぞれが、深い考察を重ねることができる分科会となりました。
【リポーターからのリポート】
- ■ 国民としてもっと身近に日本経済を考える(たまふ〜さん)
財政赤字が深刻だと各メディアで報じられる中、日本経済のために何かしたいけれど一体何から始めてよいのか分からない、どういう方向に向かっていけば日本経済はよくなるのか、専門家の皆さんの考えを聞きたいと思い当セッションに参加しました。そもそも国がどこまで国民を保障するのか国民合意がないという話があり、私は国にどこまで保証してもらいたいのか考えるきっかけになりました。また国民合意をとる際に一票の格差の問題がキーになることを知りました。税負担は軽く保障を厚くというのは理想であって現実的ではない。高速道路1000円や定額給付金、消費税据え置きなど目先の利益にとらわれるのではなく、長期で物事を捉えどういう未来にしていくためにどのくらいの税収入が必要であると明示されたものを判断材料としていこうと意識が変わりました。賢い政府を作るためにまずは意思を持って投票に行く。若者の投票率をあげる。一票の格差は合憲であるのか。未来のために自分に何ができるか。しっかり考えて8月の総選挙に投票に行きたいと思います。
- ■ 新しい視点に気付かされ、自分の意見を熟考する(レッズさん)
川本さんが主張した、今の政策は国民の合意が得られていないという点が一番印象に残りました。現在、日本には一票に大きな格差があります。そのことに対して私は大きな問題ではないと思っていました。しかし、彼女が指摘したように、一票の格差が無くならないと経済対策も進まない。民意が歪められて国政に反映されていると考えれば、おそらくその通りでしょう。今の格差について合憲と判断した裁判官は罷免すべしという彼女の意見は新鮮でさえありました。日本の将来を考える際、民意を問う仕組みがきちんと成り立っているのか、そこから考えることが大切であると思いました。さらに、当たり前のことですが講演者の意見は各々違いました。講演を伺い、私の本当の意見とは何だろうと思いました。テーマの政治や経済、社会に対しての私の意見とは、実はメディアが伝える主張を鵜呑みにしたものであると気付かされたからです。自分自身で深く考えるということをなおざりにしていたように思います。このままでは他人の意見に流される人間になってしまう。それではいけません。今後はメディアが伝えることをそのまま受け入れるのではなく、自分なりに熟考することが大切だと思いました。深く考えて、そして、周囲と意見を交わす。そのようなことをして自分の思考に磨きを掛けていきたいです。
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