「新しい金融 〜社会の中で必要なお金を回す方法〜」
(藤野英人/藤沢久美/見山謙一郎/藤田正美※)※ファシリテーター
講師に、レオス・キャピタルワークス最高運用責任者の藤野英人さん、シンクタンク・ソフィアバンク副代表の藤沢久美さん、フィールド・デザイン・ネットワーク代表取締役で、ap bank元理事の見山謙一郎さんという金融業界の最前線に立つ専門家を講師に迎えた分科会のテーマは「新しい金融」。ファシリテーターは、フリージャーナリストでニューズウィーク元編集長の藤田正美さんです。
最初のトピックは、2008年9月15日に起こったリーマン・ブラザーズの破綻を発端とする、世界経済の悪化について。「つまり、どういうことでしょうか?」との藤田さんの問いかけでスタート。
藤野英人さんは、リーマン破綻を風船に例え、わかりやすく解説。レバレッジの話を交えながら「リーマンが、サブプライムが、そしてファンドが悪いという人がいるが、そういう社会を作ってきたという本質的な問題がある」と厳しく指摘。興味深かったのは『うまくいっている会社を見分けるための、経営者の6つのスコアリング』について。「人格」「情熱」などの6つの項目の中でたった一つ、成功する経営者には共通点があるのだとか。投資のプロが語るその切り口に、聞き入る会場はヒートアップ。参加者・講師から、感嘆の声があがります。金融、投資の初歩的な話から、デル社の創始者・マイケル・デルの情熱まで、面白さいっぱいの多彩なエピソードを披露してくれました。
リーマン破綻について、「どういう構造で儲かっているかわからないのは気持ちが悪い。実感が得られないお金はこうなる、という良い事例だった」と冷静に振り返る、見山謙一郎さん。デリバティブについて、そして、自身が理事を務めたap bankでの体験談を中心にさまざまな視点を分かち合ってくださいました。この基金は、音楽プロデューサーの小林武史さんとMr.Childrenの櫻井和寿さん、音楽家の坂本龍一さんという音楽界のビッグネームにより設立されたもの。その経験から、「金融はクリエイティブであるということに気がついた」。また投資の基準は「本気度」だと力説。お金が何に使われているかという実感を得るため、株主総会に行くこと、現場を見ることなど、自らの足で一歩踏み出すことの必要性を説きました。
世界経済フォーラム(ダボス会議)で「ヤング・グローバル・リーダー2007」の一人に選ばれた藤沢久美さんは「世の中は必ず行き過ぎる。ただそれだけ。悪者はいない。だから見直そう」と歯切れ良くメッセージ。一人ひとりが社会を変えることができるツールとしての投資、小口化の重要性をわかりやすく説明しながら、「今の日本では、投資以前に“使う”ことをしなくては」と危惧する場面も。経営が悪化してきた会社の特徴や、「素晴らしい経営者」と言われる人についてのオリジナリティ溢れる見解も飛び出し、現場を知る人ならではの具体例で会場をわかします。また午前中の伊藤麻美さんの講演にふれて、情熱・意思・想いの大切さをクールにかつ熱意をこめて語りました。
中盤、ファシリテーターの藤田さんが「リターンが多い方が良いと思う人?」「金融をどうやって選ぶ?」などと参加者達に質問。さっと挙がるたくさんの手。「預金先は、これまでは金利の良さ。今は、色々読んだり勉強したりしているが、それだけではいけないと思う」、「銀行を選ぶポイントは利便性。株などは企業のポリシーを尊重。あとは将来性」など、意識の高い回答が。
最後に「これからの金融はどうあるべき?」という大きなテーマが藤田さんから投げかけられました。世界的な金融危機、その経済的、精神的ショックから立ち直っているとは言えない現在。それでも、だからこその金融への強い想いと希望を、それぞれの講師が参加者と分かち合い、前向きな空気を作り上げました。新たな学びに満ちた時間はあっという間に終了。皆が興奮を身にまとって会場を後にする、密度の濃い分科会となりました。
【リポーターからのリポート】
- ■ 「想像力を働かせて投資をする」(たまふ〜さん)
投資初心者です。本音を言うとこのセッションに参加することにより何かイイ話(儲け話)を聞いて資産を増やすきっかけをつかむことはできないか、と思っていました。浅はかでお恥ずかしいです。心に残ったのは、「投資=儲けること、が一番大切なのではない」ということ。儲けようという発想でビジネスをすると歪んでくるという意見にも納得。パネラーの皆さんが口を揃えて“思い・意思・情熱”が必要だと話す姿に、私の考えも変わりました。お金というツールを社会のため、未来のために自分の軸をもって考えながら投資していくことの重要性に気付けた点は私にとって大きな成果です。また投資するときに想像力を働かせるということ。例として「原油が高騰するからいまが買うチャンスと情報が入った。みんなが買う。それが正しいのか?」。短期的には利益が出るかもしれないけれど、その結果、石油高騰の加速を招いてガソリンや石油関連の物の物価が上がり消費者が困るという現実が待っているのではないか、と。投資をしたお金がどんなことに使われているのか想像力を働かせるという点も大変勉強になり、今後の自分の課題とさせていただきます。貴重な分科会ありがとうございました。
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