
山本寛斎さんの後、2人目の講演者として大会場に登場したのは、表参道カレッジの講師、イー・ウーマンの円卓会議の議長もつとめる伊藤麻美さん。その華やかさからは想像もつかない、メッキ会社の代表取締役です。今でこそ利益をあげる会社ですが、そこに至るまでには様々な苦労がありました。人生の転機、経営者としての努力、家庭を持つこと、その波瀾万丈ともいえる道のりを「新しい発想と行動=喜び」と題してお話くださいました。

32才で社長になる決意を
大学卒業後はラジオやテレビでパーソナリティをしていた伊藤さんは、若くして両親を亡くされます。家族を失い、一人ぼっちになってしまったことは大きなショックだったけれど、父親の会社のその後の経営は、意識することなく30才でアメリカへ留学。宝石鑑定士と鑑別士の資格を取得。しかしその後、突然日本から会社が倒産の危機にある、と連絡が。
日本に帰り、初めて会社の状況を知ると、優良企業で借金のない父親の育てた会社が、10億円以上もの負債を抱えているとの説明。初めて会社へ足を運ぶと、社員の家族が見えてきた。誰も経営を引き受けてくれないなら自分がやるしかない……と、9年前、32才の時の出来事、心の動きを熱く語ります。今でさえ珍しい製造業での女性経営者。会場の参加者も、真剣な表情で伊藤さんのお話に聞き入ります。

チャレンジの毎日
経営の基礎もわからないなか、社員の意識変革を試み、新しい業態への変化を提案し、実行する毎日。社員の意識も次第に変わり、何と3年で経営は黒字に。多品種を扱う業態に生まれ変わることに成功したのです。
話は生き方へも及びます。「会社と結婚している」と言われた伊藤さんは、「絶対に幸せになる」という強い想いで、2005年に結婚。翌年、出産した時には、社員の皆さんが「やっと社長に家族ができた」と涙してくれたのだそう。温かいお話に、会場も涙、涙。

社員の夢をかなえる会社へ
「下請けという固定概念から飛び出し、難題をクリアすることで技術力も高めた」「製造業は厳しいが、不況ならそれはチャンスかもしれない」。「第14回国際女性ビジネス会議」のテーマである「Act outside the Box 新しい発想で挑戦しよう」を、まさに経験から語ってくださる伊藤さんの表情は明るく輝いています。「問題が克服できたのは、情熱が周囲に伝わったから。そして10年、20年と先を見れば、人が財産である」と断言。「社員の夢を叶える、社員満足度を高める会社にしたい」。それが成長のステップであると熱い想いを言葉に込めます。
「試練には意味がある。人間はたった2%の能力しか使わないというが、チャレンジすれば、その能力は広がるはず。毎日を克服しながら、人生というアドベンチャーを歩んでいきたい」。最後は、伊藤さんらしい、魅力あふれるコメントで、会場にいっぱいの前向きなパワーを送ってくださいました。
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