<2ページ目からの続き>
北朝鮮はIAEAから脱退した
IAEAによる査察といえば、北朝鮮の例もあります。北朝鮮は、1980年代にソ連から原子力発電所を建設してもらいました。このとき拡散防止条約に参加することを義務づけられ、加盟しました。ところが、IAEAによる査察は拒否し続けてきたのです。
1993年になってようやく査察を受け入れましたが、査察の結果、北朝鮮がプルトニウムを勝手に取り出していることが判明。IAEAが問題にしたところ、北朝鮮は核拡散防止条約からの脱退を宣言するという行動に出たのです。
核技術を習得するために核拡散防止条約には加盟したけれど、習得してしまったら、さっさと脱退する、という態度だったのです。
保守強硬路線を歩むイラン政権
こうして見ると、イランも、核開発に関しては、北朝鮮と似たような対応をとっていますね。イランも核拡散防止条約に参加しています。核兵器は作らず、平和目的の核開発を進めると宣言しています。
ところが、世界に内緒で核開発を進めていた疑いが出てきた途端、「ウランの濃縮は進める。これはイランの持つ権利だ」と主張しているのです。IAEAとしてはイランに対して核開発を中止するように働きかけてきましたが、イランは言うことを聞きませんでした。
そこでロシアがイランに助け船を出し、「ウランの濃縮はロシアがやってあげます」と提案しました。ロシアが濃縮を担当すれば、イランはウラン濃縮の技術も施設も持たないで済むから、イランが核兵器を開発することにはならない、という理屈でした。
しかし、この話合いも不調に終わりました。
そこでIAEAとしては、国連の安保理(安全保障理事会)に付託し、ここで対応を協議してもらうことになったのです。
イランはかつてフセイン政権時代のイラクから攻撃を受け、イラン・イラク戦争(通称イラ・イラ戦争)を経験しています。このとき以来、「防衛のための核兵器が必要だ」と考えるようになっています。
また、イラク戦争を見て、「イラクがアメリカから攻撃されたのは、イラクが核兵器を持っていなかったからだ。核兵器を持っていれば、アメリカも報復を恐れて攻撃できないだろう」と考えました。こうしたことから、核開発を進めているのではないかと見られているのです。
また、イランにしてみれば、イスラエルは核兵器をすでに持っていることが世界の“常識”になっているのに、イスラエルは世界から非難されず、なぜイランだけが非難されなければならないのだという、世界の“ダブルスタンダード”への不満もあるのです。イランのアフマディネジャド大統領は、去年、……
|