<2ページ目からの続き> ……大型のハリケーンが直撃すれば、精油所の操業はストップします。2005年夏には、こうしたことが何度も起きました。 そうなると、「精油所の操業が止まるから、ガソリンの供給が減るな。その分、値段が上がるだろう。よし、その前に買い占めておこう」という動きが出て、原油を買い占める人や会社が急増。原油価格は上昇しました。 まさに投機です。アメリカの投資家による金もうけの場となっているのです。アメリカの企業年金基金などのファンドの資金が大量に流れ込んだと言われています。 その後は、「いつまでも高値が続くわけはないだろう。よし、値下がりする前に売っておこう」という動きが出て、価格は値下がりしました。このところは、比較的落ち着いた値動きになっています。 それでも、夏場の価格高騰で、冬場に仕入れる石油の価格が決まってしまいました。 世界の原油価格はアメリカの影響を受ける 投機で上がったのはアメリカの原油先物で、中東産の原油も北海原油も、取引されている市場はそれぞれ別の場所にあります。原油の質も異なります。だから関係ないはずなのですが、そうはいきません。同じ原油ということで、アメリカの値動きに左右されます。 日本が輸入している原油は、アラブ首長国連邦のドバイ原油を中心とする中東産です。中東産油国は、オープンな市場で原油が自由に取引されるのを嫌い、閉鎖的な市場を形成しています。自由に価格が決まるのではなく、アメリカのWTIの価格より少し安い価格で売買される仕組みにしているのです。 このため、ニューヨークの取引所で原油価格が上昇すれば、ドバイ原油も値上がりします。日本が輸入する中東の原油も値上がりし、私たちがガソリンや灯油の値上がりに悩まされるというわけです。 アメリカ国内のローカルな事情によって、中東産を使っている私たちにまで影響が出るというわけです。迷惑な話ではあります。 いまになってようやく原油価格は落ち着いていますが、長期的に見れば、原油価格は、これからも上昇傾向が続くでしょう。中国やインドのめざましい経済発展によって、世界の石油の消費量はこれからも増え続けるからです。とりわけ中国の産業界は「石油がぶ飲み」といわれるほどの石油消費量です。 長い目で見れば、原油価格の高騰を覚悟しなければなりませんが、短期的には、アメリカ国内の「投機」によって、原油価格の「騰貴」が起きたのです。カッカと熱くなるでしょう? オイルマネーが日本に流れ込む 日本の消費者にとっては迷惑な話なのですが、日本の投資家にとっては、また話が別です。 このところ、日本の株式市場は大商いが続いています。日経平均株価が……
池上彰の 『解決!ニュースのギモン』