<2ページ目からの続き> ……という、はっきりとした証拠はまだありません。 つまり、いまの鳥インフルエンザは、鳥から人間に感染する力を持ってはいるけれど、人間から人間へと感染していくだけの能力はないとみられているのです。 しかし、今後たとえば、人間のインフルエンザにかかっている人間が(エーイ、ややこしい)、鳥インフルエンザにもかかったら、その人の体内で鳥インフルエンザウイルスが、人間同士で感染するウイルスに変異するかも知れません。専門家は、それを恐れているのです。
インフルエンザの特効薬は免疫システム 細菌は細胞を持っていますから、この細胞を破壊する薬を開発すれば、細菌をやっつけられます。これが「抗生物質」です。 ところがウイルスは、やっかいなことに細胞を持っていません。攻撃すべき部分がなく、抗生物質では役に立ちません。 このため、これまで長い間、ウイルスをやっつける薬は開発されませんでした。その代わり、人間が病気と戦う力=免疫を利用していました。 私たちの体には、免疫のシステムが備わっています。ウイルスが体内に入ると、それを察知した人間の脳は、体温を39度から40度に上昇させるように命令を出します。ウイルスは熱に弱いため、39度前後で死滅(正確には不活性化)するのです。 私たちがインフルエンザにかかると高熱が出て苦しいのは、体の免疫がウイルスと戦っているからなのです。 こうしてウイルスを退治できると、免疫システムは、ウイルスの“顔や形”を記憶します。次の同じウイルスが体内に入ってくると、直ちにこれを攻撃して不活性化できるのです。 この仕組みを利用しているのが「ワクチン」ですね。ウイルスを弱めたものをあらかじめ注射して、人間の免疫システムにウイルスの特徴を覚えさせ、ウイルスを不活性化させる能力を身につけさせるのです。
新型ウイルスには誰も免疫を持っていない でも、もし鳥インフルエンザが変異して新型ウイルスが生まれた場合、誰も、そのウイルスに対する免疫を持っていません。あっという間に大流行する恐れがあるのです。 事実、過去には新型ウイルスの出現によって、世界規模でインフルエンザの大流行が何度も引き起こされました。 1918年から19年にかけて世界中で数千万人の死者を出した「スペイン風邪」は、もともと……
鳥インフルエンザ―過去のサーベイもチェック!
池上彰の 『解決!ニュースのギモン』