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……「伝達性」の病気なのです。BSEは、細菌やウイルスによって起きるのではありません。プリオンというたんぱく質が異常化することによって起きると考えられています。牛も人間も、脳神経にはプリオンと呼ばれるたんぱく質の粒のようなものがあります。正常なプリオンなら問題はないのですが、ここに異常なプリオンが接触すると、正常なプリオンが異常なものに変化します。正常なプリオンが次々に異常化していくのです。
「朱に交われば赤くなる」。「悪い人間とつきあうと悪影響を受ける」というのでは、たとえとして悪いでしょうかね。とにかく、こうして脳神経が侵され、脳がスカスカになってしまいます。
細菌やウイルスではなく、プリオンが接触することによってうつるので、「伝達性」と呼ばれるのです。異常なプリオンには、対策に有効な薬は見つかっていませんし、加熱しても無力化することがむずかしいのです。
人間の身勝手が病気を拡大させた
では、なんでこんな病気が拡大したのか。そもそもは羊特有の病気だったとされています。ところが、牛を早く育てるための栄養として肉骨粉が使われるようになり、ここに羊の肉や骨を砕いたものが含まれていました。病気にかかっていた羊の肉骨粉を食べた牛がBSEになり、次に、その牛の肉骨粉を別の牛が食べることで、病気が拡大したものと考えられています。
本来、牛は草食動物。その牛に、牛の肉骨粉を食べさせるということは、いわば「共食い」をさせたことになります。「早く質のいい肉や乳を得たい」という人間の勝手な都合で肉骨粉を食べさせ、それが、こんな問題を引き起こしたのですね。
日本で初めてBSEの牛が見つかったのは、2001年9月のことでした。今年6月までに計20頭の牛がBSEであることが確認されています。
「安全」より「安心」を重視した
日本でもBSEが発見されると、国内はパニックに。少しでも危険性をなくすために、2001年10月、牛を肉にするときには、全頭検査することになりました。
しかし、この方法は、いささか科学性に欠けたものでした。BSEは、体内に異常プリオンが入り、それが脳神経の正常なプリオンに接触して異常化させることによって起こります。ということは、……
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